③ 手足の疾患

1) ばね指(弾発指)

指の腱鞘炎です。よく手を使う、中年以降の女性に多く見られます。
指の付け根を押さえると痛みが生じます。
指に力を入れたり、指を曲げ伸ばしするときに痛みが生じ、仕事や日常生活に支障をきたすことがあります。
進行すると、指曲げて伸ばした時、引っかかるようになることがあります。
この際、あたかもばねが伸縮する現象に似ているため、ばね指と呼んでいます。

治療
腱鞘炎の治療の基本は局所安静、すなわち使わないことです。
疼痛が強い時は、外用薬の塗布、超音波による治療、腱鞘内注射などがあります。
また、弾発現象が高度な場合は、腱鞘切開術が必用なこともあります。


2) へバーデン結節

指の第一関節が変形し曲がってしまう原因不明の疾患です。
一般に40歳代以降の女性に多く発生します。指よく使う人になりやすい傾向があります。
第1関節背側の中央の伸筋件腱付着部を挟んで2つのコブ(結節)ができるのが特徴です。

症状
示指から小指にかけて第1関節が赤く腫れたり、曲がったりします。
関節の動きが悪くなり、痛みのため強く握ることが困難になります。
第1関節付近に水ぶくれような透き通ったでっぱりができることがあります。
これをミューカシスト(粘液嚢腫)と呼びます。

検査
レントゲン検査で、診断可能です。指の変形をきたすリュウマチも鑑別疾患としてあげられますが、レントゲンおよび血液検査で診断可能です。

治療
局所の安静、投薬、局所のテーピングなどがあります。
最近女性ホルモンの減少が原因ではないかと言われています。
サプリメントが有効な場合があります。


3) 狭窄症腱鞘炎(ドケルバン病)

手首から親指の付け根の周辺に生じる炎症です。この部位には、短母指伸筋腱(親指の第2関節を伸ばす)と、長母指外転筋腱(親指を広げる)が通っており、手関節のレベルでこの二つの腱は手背第1コンパートメントと呼ばれる腱鞘に包まれています。
親指の使い過ぎによってこれら腱、腱鞘に負担がかかり炎症を生じ痛みが発生します。
出産後、子供を抱っこする際下になる手に起こりやすく、ママさん腱鞘炎ともいわれています。また、手首を使う楽器の演奏、PC作業者、テニスなどのスポーツ選手にも多く見られます。

治療
局所の安静、投薬、局所のテーピングなどがあります。
腱鞘内ステロイド注射、超音波治療が有用です。


4) 母指CM関節症

物をつまむ時やビンの蓋を開けるときなど母指に力を必要とする動作で、手首の母指の付け根付近に痛みが生じます。

原因
手の使い過ぎによって、関節軟骨の摩耗が発生し、腫脹、亜脱臼してきて母指が変形することが原因です。

検査
レントゲン検査で、診断可能です。CM関節の隙間が狭く、骨棘があったり、ときには亜脱臼が認められます。

治療
局所の安静、投薬、局所のテーピング、装具療法などがあります。
関節内内ステロイド注射、超音波治療が有用です。


5) テニス肘(上腕骨外側上顆炎)

肘の外側に痛みが生じる疾患で、物を持ち上げたり、手をひねったりする動作を繰り返すことを原因として発症します。

原因
指や手関節を伸ばす筋肉には、長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、総指伸筋などがあり、これらが上腕骨の外側上顆と呼ばれる肘の外側に付着しています。物を持ち上げたり、手をひねったりする動作を繰り返すと、
慢性的に同部位に炎症が生じることが原因と考えられています。

治療
局所の安静、投薬、ストレッチ、局所のテーピング、装具療法などがあります。
関節内内ステロイド注射、超音波治療が有用です。


6) 外反母趾

外反母趾とは拇趾の付け根の関節が第2足趾の方にくの字に曲がったものです。
拇趾の関節は通常、外側の第2足趾の方に沿って曲がっていますが、この角度(外反母趾角)が20度以上のものを外反母趾といいます。
靴との摩擦で強い痛みが生じるため、歩行障害の原因となります。
中年以降の女性に多く発症しますが、最近ではハイヒールが原因で20-30歳代の女性にも多く見られます。
当クリニックでは、足の裏の形、荷重分布がわかるフットプリントの検査が可能です。

治療
痛みに対して消炎鎮痛薬や湿布などが用いられます。
また外反母趾を矯正するための葬具やアーチ構造を保持するための足底版などが用いられます。
上記のような保存的治療に抵抗した場合は、骨切り術など手術的加療があります。