② 関節疾患

1) 変形性膝関節症

変形性膝関節症は、加齢や体重の増加、外傷などにより膝関節の軟骨がすり減り、膝に強い痛み(主に膝の内側)を生じる疾患です。
膝関節には体重の約5倍の力が働くため、歩行時や階段昇降が著しく障害されます。

症状
初期では、立ち上がり時や歩行開始時の疼痛から始まります。
進行すると、階段昇降が困難となり、さらに悪化すると膝の可動域が減少し正座が困難となります。
変形性膝関節症では、炎症反応が生じると、膝に水がたまる(関節水腫)こともあります。

検査
レントゲン写真にて診断可能です。
必要に応じて、軟骨や半月板、靭帯などの損傷具合や、夜間痛がある患者様には骨髄内浮腫があるかどうかMRIにて詳細に診断することが可能です。

治療
鎮痛薬や外用薬の塗布、ヒアルロン酸の関節注射があります。
また、一度すり減った軟骨は再生しないので、膝周囲の筋肉をリハビリにて訓練するのも非常に有用です。
膝装具や、足底板などの装具療法も有効です。
上記の保存的加療に抵抗した場合は、関節鏡視下手術や、人工膝関節置換術などの手術的加療が必要となります。


2) 肩関節周囲炎(五十肩)

肩関節周囲炎(五十肩)とは、肩関節の運動時痛と夜間の痛みのことです。
50歳代を中心とする、40-60歳代の方に多く見られます。
肩の関節は、骨や軟骨、靭帯、腱などによって構成されています。
肩関節周囲炎(五十肩)とは、これらの組織が退行変性(老化)により炎症を起こし、肩関節の関節包が狭小化した結果、肩関節の痛みや動きの制限が生じている状態です。
多くの場合、リハビリによる運動療法や鎮痛薬や関節注射などの保存的な治療で改善が可能です。進行すると、肩関節拘縮や凍結肩となりえます。

症状
発症してから2週間(急性期)は、運動時痛や安静時や夜間にも痛みが出現します。
この時に、痛みを気にしてあまり動かさないと、肩関節の可動域が減少する原因となります。
慢性期では痛みは注射や鎮痛薬投与により軽減しますが、関節の可動域は減少したままです。
この時期のリハビリテーションは特に重要と考えます。
慢性期が約半年ほど経過すると、回復期に入ります。
徐々に痛みや動きが改善され約1年で回復します。


3) 変形性股関節症

変形性股関節症は、股関節を構成する骨や関節軟骨に不具合が生じることで、関節軟骨の減少、骨の変形をきたす疾患です。
発育時に股関節のかみ合わせが悪かったり(先天性股関節脱臼、臼蓋形成不全)、加齢によって関節軟骨がすり減ったりすると、股関節のスムーズな動作が障害を受けて変形性股関節症が生じます。

症状
初期は、足の付け根や臀部、膝の上部にこわばりや重い感じがあり、歩き始めや長時間歩いたとき、階段昇降時に痛みを感じるようになります。
進行すると、痛みが強くなり、生活に支障をきたすようになります。

検査
多くの場合レントゲン写真で診断がつきます。
さらにMRIによって、軟骨損傷、関節水腫有無、骨髄内浮腫の 状態が正確にわかります。

治療
初期は、鎮痛薬の投与および股関節周囲の筋力増強訓練などのリハビリ療法が主体となります。
進行期は、骨切術や人工股関節置換術などの手術加療も必要になってきます。